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これに懲りて律先輩もムギ先輩もあずにゃんと唯先輩を邪魔せぬよう -- (あずにゃんラブ) 2013-01-12 10 10 52
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オープニング 「Cagayake!GIRLS」 作詞:大森祥子 作曲・編曲:Tom-H@ck 歌:桜高軽音部(豊崎愛生、日笠陽子、佐藤聡美、寿美菜子) ※メインボーカルは平沢唯/豊崎愛生、他3人のメンバーもコーラスにて参加。 エンディング 「Don t say "lazy"」 作詞:大森祥子 作曲:前澤寛之 編曲:小森茂生 歌:桜高軽音部(豊崎愛生、日笠陽子、佐藤聡美、寿美菜子) ※メインボーカルは秋山澪/日笠陽子、他3人のメンバーもコーラスにて参加。 今年リリースされた中でよかったアニソンBest5 5位/6位(2009年ポイント/得票数) 挿入歌 1.「翼をください」 (第1話) 作詞:山上路夫 作曲:村井邦彦 2.「Maddy Candy」 (第4話) 作詞:KANATA 作曲・編曲:小森茂生 3.「ふわふわ時間」 (第6・11~14話) 作詞:秋山澪 作曲:琴吹紬 (作詞:かきふらい 作曲・編曲:前澤寛之) ※メインボーカルは秋山澪/日笠陽子(第6・11話)、平沢唯/豊崎愛生(第12・14話)。 4.「わたしの恋はホッチキス」 (第8・9話) 作詞:秋山澪 作曲:琴吹紬 (作詞:稲葉エミ 作曲・編曲:藤末樹) 5.「ふでペン ~ボールペン~」 (第12話) 作詞:秋山澪 作曲:琴吹紬 (作詞:稲葉エミ 作曲・編曲:川口進) イメージソング・キャラクターソング 関連作品 けいおん!! (2010) 投票用テンプレ OP…オープニング曲、ED…エンディング曲、IN…挿入曲、TM…主題曲 IM…イメージソング・キャラクターソング
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目が覚めて、時計を見ると五時半だった。 窓の外は、ちょっとだけ赤みが掛かった夕暮れだ。八月はやっぱり日が長い。 夏至自体は随分昔に終わったし、八月もあと一週間とちょっとで終わるのに。 だけど、微妙な空の色は真っ暗な部屋を少しだけ照らしていて、それがなんだか綺麗だった。 (……二時間も寝てたのね) 私は重い体を起こした。 頭ががんがんと痛んだ。風邪をひいた時に似てる。 おでこを手で押さえると、汗が指先についていた。 ……気分が悪い時に寝るとこうなるのかな。 私はまた嫌な気持ちになって――頭にりっちゃんと澪ちゃんの顔が浮かんで――。 いたたまれないような、そわそわしたような気持ちになって、すぐにベッドを降りた。 罪悪感が抜けきれない。 私が唯ちゃんに猛反発した時は、これでいいんだと自信を持って言えていた。 りっちゃんと澪ちゃんが別れるのは、一番いいことだと思ってたのに。 でも、今になって、それは間違いだと知るなんて。 それが間違いだなんて最初は思ってなかったのに。 それでよかったとなんとなく思ってた私はいたのに。 だってりっちゃんと澪ちゃんが一緒にいるの、見たくなかったから。 これでいいんだって言い聞かせてきたのに。 呪いみたいに、心にへばりついてるんだ。 心にあるのは、なんだろう。 りっちゃんの事、まだ好きなのに、届かない悔しさ? 全然違った。 私にあるのは、自己嫌悪と後悔だけだ。 りっちゃんも澪ちゃんも、傷つけた。 それで告白に失敗して、また馬鹿みたいに後悔してる私。 もう嫌だ。 唯ちゃんにあんなに猛反発したくせに。 やっぱり唯ちゃんの言ってることが正しかったんだ。 りっちゃんと澪ちゃんは、苦しんでた。 だから私は別れさせた。 でも、苦しんでただけじゃない。 一緒にいられることの幸せも、あの二人にはあったのに。 それを私は砕いたの。壊したの。 自分のわがままで、ぶち壊したんだから……。 ……もう考えるのはよそう。 息を吐いて、ベッドから立ち去ろうとした。 その時ちらっと、枕の横の携帯電話に気付いた。 ……そういえばさっき、電話が来てた。 無視すればいい。 さっきそう思って、寝た。 でも、今は――今は、なんとなく携帯を見る気になった。 それを手にとって、着信履歴を見る。 「唯、ちゃん」 だった。 ぶわっと風が吹くように、頭の中に喧嘩した記憶がフラッシュバックした。 苦い色が広がるので、目を逸らしたかったけど、でも。 でも、なんで唯ちゃんは私に電話したのだろう。 ボイスレコーダーに、伝言が残してあった。 私がまったく出なかったから、不在扱いになったようだ。 ……唯ちゃんの声が残してある。 それがもしかしたら、私に対する罵りかもしれなかった。 怖い。 でも、本当に私を嫌いなら。 罵りたいのなら。 電話なんて。 「……」 私は、目を閉じて、再生した。 ――。 『ムギちゃん。 本当はね、直接家に行きたかったんだけど、電車がなくて……。 次にムギちゃんの家の近くに行く電車があるの、六時過ぎだったから。 そんな時間にお邪魔するのも悪いし、電話することにしました。でも、出ないから、言いたいことだけ残すね。 ムギちゃん、ごめんね。 あの時部室で、私ムギちゃんの事色々と怒ったよね。 でも今考えてみると、私も……分からず屋だったと思うんだ。 私は恋を知らない。 ムギちゃんは、そう言ったよね。 その通りで、私……まだ皆みたいに恋してないんだ。 もちろん皆の事、大好きだよ。 りっちゃんも澪ちゃんも、あずにゃんも。 そしてムギちゃんも。 大大大好きだよ。 でも、その気持ちは。 りっちゃんの澪ちゃんに対する気持ちや。 澪ちゃんがりっちゃんに向ける想いとは別の『好き』だって、わかってる。 ムギちゃんのりっちゃんに対する『好き』とも、あずにゃんの澪ちゃんに対する『好き』とも違うの、わかってる。 恋愛感情を、私はまだよく知らないんだ。 だから、ムギちゃんにとって辛いこと言ったよね。 ムギちゃんは、りっちゃんが大好きだっただけ。 だからりっちゃんが苦しんでるのを、見過ごせなかっただけなんだよね。 ……あと、澪ちゃんに嫉妬したりとかもあったと思うけど。 でも、それも自然な事じゃないかなって、思って。 好きな人が苦しんでるのを、なんとかしたい。 好きな人が誰かと仲良くしているのは、辛い。 好きな人を奪いたい。 そう思っちゃうのは、仕方ないよ。 だからムギちゃんは少しだけ我慢できなかっただけだと思う。 もし私がムギちゃんなら、似たようなことしたんじゃないかな。 でも。 でもね。 りっちゃんは、絶対に澪ちゃんしか選ばない。 澪ちゃんは、絶対にりっちゃんと一緒にいると思うんだ。 だってそうだから。 もう四日も皆に会ってないから、わからないけど。 今頃あの二人は、お互い会えないことを、とても苦しく感じてると思う。 それも、一緒にいた時の苦しみよりもずっと痛い。 だからある意味でムギちゃんとあずにゃんは、あの二人を苦しめる結果にさせてしまったのかもしれない。 それは、二人もちょっとは認めなきゃ……いけないよ。 だからって、責めるなんて絶対にしないよ。 だって、苦しいのは仕方ないんだ。 私たちは、忘れてたんだ。 ねえムギちゃん。 四月からの半年間。ずっとムギちゃんと一緒だったよね。 皆で一緒にいられないこと、とても寂しかったよね。 あずにゃんは、一つ年下で。 りっちゃんと澪ちゃんも、浪人しちゃって。 私は、とても寂しかった。 だけどね、ムギちゃんと一緒にいるのも、楽しかったんだ。 二人きりでずっと一緒にいて、それも楽しかったんだよ。 嬉しいことも、笑えることもたくさんあった。 二人だけで演奏するのも、ちょっとだけ物足りないけど、楽しかった。 だから、五人で集まればもっと楽しくなる。 だから早く演奏したい。一緒に演奏したい。 そう思って、生活してた。 でも、私の知らないところで……ムギちゃんの心の中で。 そして、私の心にも。 『会いたくない』って気持ちが、芽生えてたのかもしれない。 高校生の頃は、そんなことなかったのに。 『会いたくない』って、思ってた。 会うことが、怖かったんだ。 落ち込んだりっちゃんや、それを見て悲しそうにする澪ちゃん。 想いに揺れてるムギちゃんとあずにゃん。 そんなギクシャクした関係で、私たちが集まったとして。 それは本当に、『楽しい事』になったのかな……。 多分、ならなかったと思う。 あずにゃんにも同じことを言ったんだけど。 私たちは、放課後に集まる事に楽しさを感じてた。 授業も集中できないくらい、放課後の事だけ考えてた。 それぐらい楽しみだったんだ。皆で集まることが。 でも今回は、そうじゃなかった。 『楽しみ』でないまま、会おうとしちゃった。 だから、こんなにも……辛いことになってるんじゃないかな。 さっきね、部室で、去年の学園祭のライブDVD見たんだ。 そしたらね、いろんな事を思い出したよ。 楽しかったこと。嬉しかったこと。幸せなこと。 皆で笑いあってたこと。 それは簡単に思い出せるけれど、でも。 何かがなかった。何処か足りなかったんだ。 笑いあってたことを『過去』だと、決めつけてたんだよ。 去年の学園祭も――その前の新歓も、全部過去の事だよ。 でも、だからそれは『過去でしかありえなかったもの』じゃない。 これからも皆で笑いあえる日々を作り上げていく気持ち。 そんな『未来』を、望んでいなかった。 『過去』の悩みが、そんな『未来』なんて来ないと思わせてたんだ。 私は……私たちが悩んでいた事は。 全部『過去』のこと。 だけど、それに縛られてた。 私が皆の事をまったくわかってなかったこと。 りっちゃんが受験に失敗したこと。 澪ちゃんがりっちゃんを苦しめてると疑問に思うこととか。 あずにゃんが二人を別れさせて、部活の事でも悩んだり。 ムギちゃんが自分のしたことに罪悪感を抱くこと。 それが全部。 『私は、皆といる資格なんかない』――。 そう思わせちゃってた。 私もね、皆の想いとか全然知らなくて。 全部わかった気でいたんだ。 でもムギちゃんと喧嘩して、あずにゃんの想いも聞いて。 それが、どんなに浅はかか、理解したんだ。 だから思った。 『私は最低だ』。 『皆といる価値もない』……って。 でも違うんだ。 確かにそう思ったよ。 こんな馬鹿な私が、皆といちゃいけないかもって思った。 皆の事一つも知らない私が、皆と一緒にいていいのかなって迷ったよ。 でも、でも。 一緒にいるべきか迷うぐらい、私は皆といたいんだ。 皆のために迷うぐらい、私は皆が大好きなんだ! りっちゃんと澪ちゃんもそうだよ。 あの二人は、お互いが一緒にいることに幸せを感じてた。 でも一緒にいると相手を苦しめるから、身を引いた。 でも、相手のために幸せを切り捨てるなんて。 相手の事を愛してなきゃできないよ。 それと同じなんだ。 私も、あずにゃんも、ムギちゃんも。 りっちゃんと澪ちゃんも。 大好きな誰か――相手が大好きだから、会っては駄目だと言い聞かせたんだよ。 それぐらい、大好きなんだ。 五人とも。 一緒にいるのが、大好きなんだよ。 一緒に笑い合ってたいんだよ。 だからね、ムギちゃん。 ムギちゃんは、りっちゃんに想いを伝えた方がいいよ。 少しはすっきりするかもしれない。 でも。 でも、まだ悩んでたら。 辛かったら。 大好きな私たちに、色んな事を話してほしいんだ。 辛いこと、苦しいこと、全部教えてほしいよ。 私も一緒に、ムギちゃんと考えたいよ。 だけど、ムギちゃんが一番話さなきゃいけないのは。 りっちゃんと澪ちゃんだ。 特に澪ちゃんと、きちんと話さなきゃいけないんじゃないかな。 それでね。 ムギちゃんの気持ちに整理がついて。 嫌な思いや辛い事が、抜けていったら。 一緒に集まる約束に『楽しみ』を感じれたら。 絶対に、皆で演奏しようね。 この前は、『楽しみ』にしないまま会ったから。 集まることに、楽しさを感じていなかったんじゃないかって。 だから会えなかった。 辛い思いで、帰り道に立っちゃったんじゃないかなって……思うんだ。 それじゃあ、まだ『放課後ティータイム』になれないんじゃないかって。 だから、皆で――それぞれできちんと気持ちを整理して。 ホントのホントに、『会いたい』って。 皆と一緒に演奏したい、おしゃべりしたいって思えたら。 その時、やっと会えるんだと思う。 それぐらい五人でいることは、かけがえのないことだから。 だからムギちゃん。 私たち、待ってるから。 いつまでも待ってる。 私、絶対に逃げないから。 ムギちゃんがおいしいお菓子とお茶を持ってくるの、待ってるから。 それじゃあね』 おいしいお菓子と、お茶。 片手に携帯電話を持ったまま、暗い部屋に佇んでいる私。 突風が吹くみたいに、頭の中に記憶が駆け巡った。 はちみつ色の午後が過ぎる時間を。 皆で笑ってた、あの放課後を。 ……唯ちゃんは、それを『過去』のままにしたくないと言った。 私もだ。 私も、笑いあってた過去をそのままにしておきたくなんかないよ。 これからも笑いあってたいよ。 皆で一緒に演奏したりしたい。 でも、それはできないの。 私は皆の気持ちを裏切ったも同然なんだから。 りっちゃんの気持ちをまったくわかっていなくて。 澪ちゃんのりっちゃんへの想いも否定して。 後悔なんてしてないなんて思ってたのに。 結局、二人を別れさせたことに後悔してるなんて。 そんな私は、私は……。 『私は、皆といる資格なんかない』――。 唯ちゃんの声は、頭に響いた。 また見透かされてる。 いつだってそうだ。 唯ちゃんは、私の――皆の気持ちを、これでもかってくらいに見抜いてしまう。 どうして。 それだけに、耳に残るんだ。 うるさいくらいに。 もういいんだって何度言えばわかるんだろう。 待ってるなんて、聞きたくない。 唯ちゃんが待ってても、私はそんなの嬉しくないのに。 皆が私を待ってても、私は『私』を待ってないの。 自分が大嫌いなんだ。 楽しかったよ。 すごく楽しかった。 楽しかっ『た』んだ。 もうそんな時間は戻ってこない。 だって、私は皆と会いたくないんだ。 『大好きな誰か――相手が大好きだから、会っては駄目だと言い聞かせたんだよ』――。 また唯ちゃんの言葉が脳裏を過ぎる。 私は、皆に会いたくない。 それは皆が嫌いになったからじゃない。 皆の事は大好きだ。今もすっごく大好きだ。 でも私が嫌いなんだ。 私自身が嫌いになってしまった。 だから唯ちゃんの言うことと同じ。 このまま皆に会うことは。 『楽しみでない』まま会うことになるんだ。 そしてこの気持ちは、多分ずっと残ってる。 だって。 私は取り返しのつかないことをしたんだ。 りっちゃんと澪ちゃんを、別れさせてしまったんだもの。 あんなに愛し合ってる二人を、私が。 そんな私が、どんなに馬鹿で浅はかで、考えのない子か嫌でもわかる。 でも。 でも唯ちゃんの言葉が、嬉しくないわけじゃない。 嬉しいけど、切ない。 複雑な気持ち。 拒絶したいほど、優しい言葉。 でも拒めないまま、心と頭にすごく染み渡ってた。 唯ちゃんの言ってる事はわかるんだ。 そうするのが、私たちにとって一番なことなんだって。 楽しむために集まって、演奏すること。 それが私たちの『未来』なんだって、信じたい。 信じたいよ……。 でも私はそんなに綺麗じゃない。 たまらなく汚いの。 それが大嫌いなの。 そんな私が、皆といちゃ駄目なの。 そう言って、逃げて逃げて。 りっちゃんと澪ちゃんの仲を裂いたくせに。 自分が苦しいから、皆から逃げてるんだ。 ――待ってる。 そう言った唯ちゃんから、逃げて。 閉じこもってる。 こんなの嫌なくせに、その選択をしてるなんて。 私は……。 その時だった。 片手に掴んでいた携帯がバイブした。 メールだった。 「澪、ちゃん……」 メールボックスに表示された名前。 澪ちゃん。 澪ちゃんだった。 どうして。 どうして皆私なんかに。 澪ちゃんに酷いこと言ったのに。 私は澪ちゃんの――りっちゃんへの気持ちを否定したのに。 抜け駆けしてりっちゃんを奪おうとまでしたのに。 澪ちゃんは、私のことを大嫌いになってるはずなのに。 りっちゃんへの想いを否定されたことが、澪ちゃんにとってすごく辛いことだってわかるのに。 なんで……。 震える指先。 もしかして文句や怒りが切々と書き連なってるかも知れない。 澪ちゃんはそんなことしない。 でも、りっちゃんの事が絡んでる。 澪ちゃんは……。 私はゆっくりとメールを見た。 短い、簡潔な文章だった。 『ムギ、話したいことがあるんだ。二人だけで。 明日、何処かで会えないかな』 ■ 駅のホームのベンチに座って、私は息を吐いた。 数秒前まで、ムギちゃんの携帯電話に伝言を録音していた。 しばらく電車の来ないホームは、人一人いない寂しさを抱いている。 私は携帯電話を閉じた。 あずにゃんもムギちゃんも、電話に出なかった。 二人とも塞ぎこんでいて、電話に出るつもりはないんだと思う。 それだけ、誰かを拒絶したい自己嫌悪に嵌まってる。 ……だけど、想いは伝えた。 私は、私の思ってること。 DVDを見て思ったこと。 私たちがこれからどうすれば再び笑いあえるとか。 めちゃくちゃだけど。 筋も通ってないけど。 ありのままに言葉にしたつもりだ。 なんとか伝わるといいなあ。 時計を見ると、五時半を回っていた。 二時頃に部室を出て、あずにゃんの家に行ったけど誰もいない。 そして駅まで走ったけど、今度はムギちゃんの家の方へ向かう電車がない。 直接話したくて走り回ったのに、結局会えなかった。 実際あずにゃんに電話を掛けたのは、三時半頃だった。 それから、ムギちゃんにも電話して。 もうあれから二時間。二人は聞いてくれたのかな。 もう憂たちも夏期講習が終わる頃だ。 どうせなら迎えに行こうかな……。 夕日に染まりつつあるホームの地面。 私は妙に切ないけど、満たされた気持ちになって、立ちあがった。 駅のホームから出て、道に出る。 空を見上げて、何も考えないまま少しそのままでいた。 息を吐いて、並木道の方向を見た。 「……あ」 並木道の下を歩く二人の女の子。 こちらに向かってゆっくり歩いてくる、二人。 それは。 それは紛れもなく、りっちゃんと澪ちゃんだった。 戻|TOP|ROCK!!第四話
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1 pixiv ほのぼの 2012/09/27 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348754086/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る ほのぼのさや優しい感じが好きですね。 書いた人はけいおん好きなんだろうなぁと。 -- (名無しさん) 2016-07-21 20 43 36 何ていうかしゅっとしてるのがいいですね。 -- (名無しさん) 2016-07-07 23 27 33 たまには胸やけするような濃いのを読む衝動にかられるが、やっぱこういうのに帰ってくる。 -- (名無しさん) 2016-04-12 22 54 19 スミノの続編合わせて通し読みするのもいいな。 -- (名無しさん) 2015-11-04 22 09 29 スミノも含めたシリーズの続き欲しいね。 -- (名無しさん) 2015-04-10 22 33 05 やっぱいいな。 -- (名無しさん) 2015-01-06 01 12 52 欝を見た後は和む。 幼い唯憂が可愛い。 -- (名無しさん) 2014-11-17 23 29 49 シリーズの起点を再確認しました。 文も綺麗でいいですね。 -- (名無しさん) 2014-10-04 00 31 28 消しゴム投げるシーン、アニメにもあったな。 正にけいおん。 -- (名無しさん) 2014-08-14 21 32 27 ケもなくハレもない。 でも、安心して読めます。 疲れてる時にはお勧めです。 -- (名無しさん) 2014-04-12 00 32 33
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ゆいあず その10 - すれちがい ==================== 「こんにちは」 「あ!あずにゃん!やっほー!」 ようやく部室に来てくれたあずにゃん目掛けて、私はいつもの調子で抱きつきに走る。 「にゃっ!」 「今日もあずにゃん分の補給ー!」 「来たばっかりなのに止めてくださいよ、もう」 お構いなしに、ぎゅっと抱きしめる。『止めてください』なんてもうすっかり言われ慣れてるから、今更気にする必要はないもんね。 今日はいつもと違って、すぐに振り解こうとしない。何かあって元気がないのかな?それとも、私の愛情表現に抵抗するのは無意味だと、やっと分かってくれたのかな? 「……唯先輩。もう、止めませんか?」 「えっ?何を?」 「……こういうことを、です」 あずにゃんは私の腕をちょこんと抓んでいる。要するに、スキンシップの強要を指しているんだろう。もちろん腑に落ちないので、訊き返す。 「なんで?」 「それは……その……」 「理由がないならいいじゃ〜ん」 「だ、ダメなものはダメなんです!」 「えーっ!私はしたいー!」 私から離れて体勢を整え、あずにゃんはびしっと指さして言い放った。 「金輪際、私に抱きつくのは禁止です!」 こんりんざい? 「……澪ちゃん。こんりんざいって何?」 「ああ……確か『どこまでも』とかそういう意味だったかな。言い換えるなら『今後』とか『一切』みたいな感じかな」 「『これからずっと』ね!なるほど、さすが澪ちゃんだね」 その意味を咀嚼してから——澪ちゃんの博識ぶりを少しだけ恨めしく思いつつ——再びあずにゃんに向き直る。 「……そんなことになったら……わたし……死んじゃうよ……?」 「大袈裟ですね……」 やれやれと云った表情をするあずにゃんだけど、私にとっては深刻な問題だ。このままスキンシップが出来なくなるのはとても困る。どうにかして考え直してもらわないと。 「おねがーい!せめて期限をー!」 「……それじゃあ、私が許可をするまでにしましょう」 「えっ!」 それって明確な答えになってなくない!? 「あずにゃーん!なんでダメなんて言うのっ?なんで急にっ!?」 「え、えーと……」 「……?」 心做しか、あずにゃんは言い淀んでいる風に見える。視線もどこか游いでいて、言葉を継ぐに継げていないような、そんな気がするんだけど…… 「とーにーかーく!ダメなものはダメなんです!」 「うえーん、あずにゃんがよくわかんないけど怒るー」 「練習しましょうよ、練習!ほら、律先輩も、澪先輩も、ムギ先輩も!」 「お……おう」 「そ、そうね。お茶も後にしましょう」 「梓、取り敢えず落ち着け……」 私たちを横目で見ていた三人も、急に振られてちょっとビックリしたみたい。 * それから三日が経って。 「唯、調子悪いのか?」 「うん……」 「源因って、やっぱり梓ちゃん不足?」 「……うん。多分そう」 「冗談だと思ってたのに、まさかこんなになるとは思わんかったぞ……」 禁止を言い渡されてほんの数日。幾ら短いといえども、何も思わない筈がない。ほとんど毎日のようにしていたことを急に止められてしまって、満たされる筈の充足感は欠けたままになり、どうにも落ち着くことが出来なかった。 「ねぇ、みんな」 その中でも、ある疑問がずっと胸の中で鬩いでいて、今ももどかしい気持ちを引き摺らせている。 「あずにゃんは、なんであんなこと言ったんだと思う?」 今朝は思い切って、みんなに意見を尋ねてみることにした。 「う~ん……単に鬱陶しくなったから、とか」 「それ、想定する中でも最悪の答えだよぅ……」 「あ……ごめん、唯」 澪ちゃんも悪気があった訳じゃなくて、うっかり口にしちゃったんだと思うけど……心の傷を刳るには充分な言葉だ。 「ま、そんな気を落とすなって」 りっちゃんはここぞとばかり部長らしく、優しく声を掛けてくれた。 「別に無視されているとか、そういうんじゃないしな。そこまで気落ちするほど大事じゃないだろ。実際、唯がこんなに落ち込んでるんだし、梓も実は後悔してるんじゃないか?」 「そうよね。梓ちゃんが本気で言ったとは、到底思えないもの」 「……うん。ありがとね、みんな」 ムギちゃんも賛同してくれた。みんなの優しいフォローが、少しだけ振り向きかけた私の感情を、前向きにさせてくれた。うん、みんなに打ち明けてよかった。 でも、こういうことは本人に直接訊きたいよね。 * その日の放課後。 「——こんにちは」 部室の扉を開けて覗く、見慣れたその顔。 私の憔悴具合とは対照的に、あずにゃんはあの日からあまり変わっていない。 「あずにゃぁぁぁん!」 「だーめーでーす!」 ……いや、前言撤回。あずにゃんの抵抗が、今までとは打って変わって熾烈になった。私とのスキンシップを何が何でも避けようとしていて、最近のあずにゃんの攻勢は何かと強気だ。 「うっ……あずにゃんはまだ許してくれないのね」 「唯ちゃん。今日も美味しいお菓子を持ってきたから、早くお茶しましょう」 ちょっと淋しいけど、今日も美味しくお菓子はいただきます。 「今日はシュークリームでーす」 「わーい!いただきまーす!」 うん、うまい!ムギちゃんのオススメのおやつにハズレはないね。毎日食べられるなんてホントに贅沢だなぁ。 「あ……唯先輩、口元が」 「んん?……おっと」 あずにゃんに促されて、人差し指で軽く口元をなぞる。シュークリームから溢れ出したクリームが、べったりとついていた。 私は何気無しに、さも当然のようにお願いをする。 「あずにゃんとってー」 「……それぐらい、自分でやってください」 もう、あずにゃんったらなかなか剛情なんだからっ!でも、もう一押しすればきっと拭いてくれるはず。今までずっとそうだったもんね。 「んーっ!」 身を乗り出して、顎を出す。ところが、あずにゃんは構ってくれるどころかそっぽを向いてしまった。 「律先輩、やってあげてくださいよ」 「なんであたしが……しょうがないな」 りっちゃんはポケットからハンカチを取り出して、私の口元を拭ってくれた。 ……何か違う。何か違うよ、これは。 「りっちゃん……もっと優しく……」 「っるせー!つーか自分でやれ!」 りっちゃんに軽くお叱りを受けて、ハンカチを受け取り自分でも拭く。 「……梓ちゃん?」 「……梓?」 「……あずにゃん?」 「……」 いつもの調子で流されてしまうと思っていたのに、そうならない。そこに引っかかりを覚えたのか、みんなして違和感を隠せないといった顔をしている。 あずにゃんを覗ってみても俯いたままで、私と目を合わせてくれない。もしかして、気まずい空気にさせちゃった……? 「梓、そろそろ話してくれないか。この前から……唯と何かあったのか?」 そんな私たちを見兼ねたのか、澪ちゃんが話を切り出してくれた。 「……すみません。お話します」 あずにゃんは椅子を引いて立ち上がり、私たちを一瞥してから、話を始めた。 「一年以上一緒に過ごしてきて、やっと分かりました。今まで、唯先輩を甘やかし過ぎたと思うんです。あと一年もしないうちに卒業して、大学生なんですよ?社会人に少し近づく訳じゃないですか。それなのにこの体たらく……。今からでも矯正するべきじゃないかって、思ったんです。これは……言うなれば、唯先輩のしつけです」 「私のしつけ!?」 「しつけ……いい響きねぇ……」 「その言葉はちょっと違わないか……」 あずにゃん曰く、何時までも後輩が世話を焼いているようでは先輩の為にならないから、多少厳しく接するべきだと考えたそうだ。他ならぬ私を思っての対応に過ぎないらしい。 しつけ、という表現に若干の衝撃を受けながらも、その行動の意図は明かされたわけだ。 「まあ、正論に聞こえなくもないか。……唯、なんか言ってやることはあるか?」 「うん……まぁ、ちょっと淋しいかな。でも、あずにゃんは私のことを思ってくれてたんだね。ありがとう」 「よ、喜んでいただけるのなら……」 「うん。あずにゃんの為にも、私、頑張る!……でも、最後に一回だけ」 「だーめーでーすー!」 ・ ・ ・ * ——あれから、帰宅して。 最近はベッドに横になってからも直ぐに寝付けずに、天井を見つめて物思いに耽ることが多くなった。思惟の中心はもちろん、あずにゃんのこと。 「……結局、あずにゃんの答えが聞けなかったなぁ」 さっきの帰り道、あずにゃんにどうしても訊きたかったことがあったので質問した。けれども、あずにゃんは何も言わないで、急ぎ足で帰ってしまったのだ。 「……もしかして、嫌われちゃったのかなぁ?」 心の奥底で芽生えていた、後ろ向きの感情が疼く。 約束を言い渡されたあれからも、部活では普段通り接しているし、指摘されるほどぎくしゃくした感じではない。触れることには異様に拒否感を示されていることだけを除けば、だけど。 その割にはさっきもそうだったけど、いつもの帰り道で二人切りになることは何も考えていなかったみたいだ。 「質問自体が直截的すぎて逆に怒らせちゃった……とか、かな」 帰り道は二人切りで、どうせ誰にも見られていないのだから、無理矢理にでも……と少しだけ不躾な発想が掠めたこともある。今日なんて絶好の機会だったかもしれない。でも、そんなことしたら益々あずにゃんに嫌われるだろうと、思い留まった。 「別に、そんなつもりじゃないんだけど……」 ……本当にそうなのかな? あずにゃんが可愛すぎるから、抱きしめたくなるんだけど…… やっぱり好きだからかなぁ? 「好きだけど……うーん?」 好きってどういうことなんだろう。改めて考えてみると、それはなかなか不思議な感情だと思い知らされる。ぱっと考えてみたところで、ちっとも分かりっこない。 やがて、胸の中で得体の知れない感情が湧き起こる。 「うーん……」 抑々、この習慣は何時から始めたんだろう。もしかしたら、出会った時からこうしてたかな。 最初のうちは振り解こうとして、私の腕の中でよくもがいていた。それはそれで、じたばたする仔猫のような愛らしさを覚えて、更に抱きしめる力を強くしていたっけ。 それから私の粘り強さを思い知ってくれたのか、抵抗する時間がどんどん短くなっていった。言葉に表すと変な感じだけど——抵抗されなくなっていくのには、正直ホッとした。私に対する危機感が拭われたのだと思えば、却って嬉しかったからだ。 今でも続けちゃうのは——それだけ、あずにゃんのことが可愛くて仕方ないと思ってるってことなんだけど、ちゃんと伝わってるのかな。 「……明日はちゃんと、お喋りしたいなぁ」 私があずにゃんと一年以上過ごして分かったことって、何だろう? ——すぐに答えが出てきそうにない自問をしてから、瞼を閉じた。 * ——翌日。 思考を巡らせれば、必ずあずにゃんの顔が付き纏う。これは完全にあずにゃん欠乏症だと、自分でもはっきり分かる。足りなさすぎて、思わず不敵な笑みもこぼれてしまうぐらいに。 「ふっふっふ……」 放課後になってからみんなに断って、私はあずにゃんが居るであろう教室へと足を運んでいた。今は、何としてもあずにゃんに会いたかったのだ。 「あ!……あずにゃぁぁぁん!」 「んにゃ!」 あずにゃんの姿を発見したとき、私は異常なまでに昂揚感を覚え、全速力で駆けた。あろうことか、その勢いのまま飛びついた。当然ながら私の力を受けきることが出来ずに、あずにゃん諸共廊下に倒れ込んでしまった。 しばらくは周囲を気にせず、あずにゃんの胸元に顔を埋めることに専念する。両腕から伝わる感触。この抱き心地……。久し振りに味わうこの感覚。私にとっての倖せって、もしかしてこれなんじゃないかな……なんて。 三日分のあずにゃん分を取り戻せたと思い、いざ顔を上げてみると。 「……せん……ぱい……」 あずにゃんは、涙を浮かべていた。 「……え?」 「ダメって、ずっと、言ってきたのに……」 咄嗟の行動に出てしまったが、彼女の涙を見てようやく今の状況を呑み込む。後輩を押し倒す上級生。なんて最低な光景なんだろう。 慌ててあずにゃんを起こした。は、早く謝らないと…… 「ご、ごめん。つい、出来心で……」 すっくと立ち上がったあずにゃんの、強烈な一言。 「……先輩のことなんて、もう、知りません!」 顔を真っ赤にさせて、脱兎の如く駆け出してしまった。 私はその姿を、ただ惘然と見つめるしかなかった。 「……あれ?あれれ?」 どうすれば、いいの? 「……という訳で、本気で泣かれっちゃったんだけど」 「おまえは何をしたんだ!」 あずにゃんが去ってしまい途方に暮れた私は、とりあえずみんなが待っている音楽室へと駆け込んだ。 「そのまんまだよ!廊下であずにゃんを見かけたから、ぎゅーってしようと思ったんだけどさ。勢いつきすぎて押し倒しちゃっただけだよ」 「あらあら……公衆の面前でだなんて、唯ちゃんってば大胆♥」 「……ムギはさて置きだな」 仕切り直すぞ、とりっちゃんは言った。 「梓が泣いた理由って、多分抱きついたからじゃないと思うんだよなー」 「えっ、違うの?」 「梓も、唯の抱き癖みたいなのは充分に理解していると思うし、今更抱きつかれたぐらいで泣くっていうのも考えにくいんだよ」 「……そういうものなのかな?」 「実際のところは分からないけど、大方律の言う通りだと思うよ。傍から見ている私たちが言うんだから——多分、間違いない」 三人の意見を聞いて、私は驚きを隠せなかった。当事者よりもはるかに冷静になって答えを出せている。 みんな、すごい。 「唯は本当に、それ以外で梓に泣かれるような覚えがないんだな?」 「……うん」 「じゃあ、梓がちゃんと説明してくれるのが一番だな。とにかく、話を訊いてみるしかないだろ」 「うん……とりあえず、探さないと」 「私たちも手分けして探すぞ。澪もムギもいいよな?」 「もちろん」 「当たり前、だろ」 「……みんな、ありがとう」 * 「あずにゃ〜ん……どこー?」 みんなで散り散りになって探すことにしたけれど、誰一人向かった先の検討が付かない。私はひとまず、あずにゃんの教室に向かってみることにした。 「失礼しま〜す」 ドアを開け恐る恐る覗いてみたけど、案の定誰も居ない。 「……当たり前、だよね」 しばらく教室内を見回してみる。昼間の賑々しさを失った、静謐な空間。どのクラスも同じ造りにはなっているのに、私たちと学年が一つ違うだけで受ける印象はがらっと変わってしまう。……なんだか不思議だ。 がらんとした教室の真ん中に立つと、また物思いに耽ってしまう。彼女が見つからないことも相俟って、淋しさがくたふつふつと湧いてくる。 ——あずにゃんも何時かは、私の傍を離れちゃうのかな? そうやって感傷に浸る度に、考えてしまう。あずにゃんは、とっても大切。だから、これからもずっと一緒に居たい。離れ離れになんか……なりたく、ない。 「あずにゃん……」 ケータイの着信を知らせる振動音が、微かに響き渡る。 「……ムギちゃんからだ」 <梓ちゃんは屋上にいます。唯ちゃんを待っているから、早く迎えに行ってあげてね> 「……屋上!」 メールを見て、一目散に駆けだす。廊下は全速力で、階段も一足飛び。息切れに喘ぐ暇も許さず、目的地まで辿り着いた。 呼吸を整えて、屋上へと続く錆び付いた扉を開ける。 「……あずにゃん」 「唯……先輩」 まずは——謝らないと。 「ごめんね!」 「ごめんなさい!」 二人同時に頭を下げてしまった。妙なところでシンクロしてしまうのが、何だかおかしい。 「今まで迷惑をかけすぎて、呆れちゃったんだよね……?だから、私のことを気に掛けて、色々してくれてたのに……。さっきは、本当にごめんね」 「ち……違います。そうじゃないんです。その……色々事情がありまして。今はまだ、ちゃんとお伝えできないんですけど……」 「……私のこと、許してくれる?」 「……許すもなにも、最初から怒ってなんかなかったんです」 「最初って、あの約束の時から?」 「——そうですよ」 その言葉を聞いて、急に身体から力が抜けてしまった。 「よかったー。あずにゃんに嫌われたのかと思ってずっとモヤモヤしてたんだけど、もうこれで心配ないね」 「すみません、私のせいで……」 「いいのいいの。これからもよろしくね、あずにゃん」 「……はい」 嬉しそうなあずにゃんにつられて、私も顔を綻ばせる。拗れた糸が元通りに解かれて、ほっと胸を撫で下ろした。 何よりも、この笑顔がまた見れて良かった。 「許してくれるってことで、仲直りに一回だけ〜」 「にゃっ!」 「……やっぱり嫌だったりするの?」 「……あ……いえ……スミマセン。それより早く……部活に戻りましょう」 「……うん、そだね」 これからもずっと傍に居てほしい。 何時の日か、言えることを願って。 あずにゃんに寄り添いながら、私たち二人は、屋上を後にした。 ◆ ◆ ◆ 「はあ……私、何してるんだろう」 曲がり角を飛び出してきた唯先輩に押し倒されてから、どうも記憶が飛び飛びになってしまっている。先輩から逃げることに必死すぎて、無我夢中で駆け出して、気が付いたら屋上に避難していた。 「唯先輩……」 私が今まで拒み続けてみせたのに、言い付けはつい先程破られてしまった。その事に絶望して、悲しくなっているのか。 ……違う。全然、違う。そう、全部自分が悪いのに、危うく唯先輩に責任転嫁するところだった。私ってば…… 屋上の鉄扉を開ける音が、ぎしっと響く。 「あら、ここが正解みたい」 「……ムギ先輩?」 意外な人が目の前に現れて、私は目を丸くした。 「先輩、どうしてここに?」 「梓ちゃんこそ」 「あ……べ、別に意味はありません」 「そっか。そうなのね。でも、私は梓ちゃんに用事があるの」 「……え?」 私に、用事って? 「率直に言うわね。……唯ちゃんのこと、どう思ってるのかな?って」 「唯先輩のこと、ですか?」 それは、どういう意味でしょうか。 「いきなり躾だなんて言うから、驚いちゃったわ」 「それは、この前説明した通りですよ。唯先輩の将来が心配になったから——」 「……うん。それは、違うんだよね?」 「えっ……」 ムギ先輩は、あくまで淡淡と語りかけてくれる。 「梓ちゃんが優しい子だって、みんな知ってるもの。だから、ここ最近の振る舞いも、ただぶっきらぼうになっているんじゃなくて、本当の考えがあったからなんじゃないかなって、思ったんだけど……どうかな?」 「……」 あれから沢山思い巡らせてみたけれども、否定し続けられなくなってしまった。 私の考えは——私の思いは、得てして深みにはまっていたのだろう。 「気持ちの整理とか、どうかしら?唯ちゃんとお話しして、解決できそう?」 実はもう、とっくに見抜かれていたということでしょうか? 「はい。やって、みます」 「じゃあ、唯ちゃんにここに居るって伝えるわ。連絡したら、私も部室に戻るね」 先輩はケータイを取り出して、慣れた手つきでメールを送信する。風に靡くその後ろ髪が、とても綺麗。 「ムギ先輩は、何でもお見通しですね」 私の言葉にムギ先輩は振り向いて、決して気取った風のないまま、言い聞かせてくれた。 「そんなことないよ。これも、一年一緒に過ごして分かったことだから、ね?」 そう言い残して、先輩は扉の向こうへと消えてしまった。 「……ありがとうございます」 ——私の考え、か。 いつか臆面なく、正直に出してみたい。 固く心に決めて、先輩の到着を待ち望むことにした。 ◆ ◆ ◇ いつもの交差点で、私と唯先輩の二人に分かれた後の、帰り道。 「それでですね、澪先輩が……」 あれから三日が過ぎた。先輩は、ちゃんとあの約束を守ってくれている。 拘束されなくなって平穏無事な生活を送る最中、常に一歩引いた位置で観察し続けてきたけど、私がそんな風に捉えていた節は無かったんだと実感したのは大きかった。 先輩にとっては非情な約束だったかも知れないけど、そんなしおらしくなる先輩を見るのも珍しくて面白かったし。 「……唯先輩?」 「……あ、ごめんね、あずにゃん。何の話だっけ?」 唯先輩は、部活が終わってからしょんぼりしているように見える。まさか、しつけって表現をまだ気にしているのだろうか?それとも、そもそも取って付けたようなこの提案の内容が苦しかったのかな?でも、さっきは頑張るって、言ってくれてたのに……うーん。 「さっきからぼーっとしてますけど、どうかしましたか?」 口数少なくダウナーな唯先輩に、そこはかとなく漂う魅力を感じなくもないんだけど……って、私は何を言ってるんだ。 「……私ね、さっきから変なコトばかり考えてるの」 「……変なコト、ですか?」 唯先輩なりの変なこととやらが想像できずに、私は訝しむ。 「ねっ、あずにゃん。二人切りだし、ここでならいいよね?」 「えっ?な、何がですか?」 唯先輩、何を言ってるんですか……? 「二人切りだなんて、そんな……」 変な予感が脳裏を過ぎる。 「だってあずにゃんってば、触らせてくれない癖に、二人で一緒に帰るのは良いみたいだからさ。こういうのはアリなのかな?って」 「……あっ」 しまった、完全に考えが及んでいなかった。仮にも唯先輩はそういうコトを積極的にしてくるとは思わなかったから、防備も考えていなかったけど、まさか、そんな訳が…… 「ねぇ。聞いていいかな?」 「ど、どうぞ……」 「みんなに言わないから、ホントのことを言って欲しいの」 心臓が早鐘を打ち出す。緊張が感覚を鈍らせる。落ち着け私、落ち着け私…… 「……私のこと……どう思ってるの、かな?」 「……っ!」 せんぱい。それ、どういう意味ですか? 私の歩みは完全に停まっていた。顔も火が出そうな勢いで、どんどん赤らんでいる。そんなこと、真正面から言われるなんて計算外だし、相応の答えなんて用意してある筈がない。 「ゆ、ゆ、ゆい、ゆい先輩のことは……その……あと……ええと……」 ダメだ、自分で何を言おうとしているのかが分からない。身体がどんどん火照っていく。暑い…… もしかして、先輩に、意識されていた? それともまさか、唯先輩に気付かれていた? 「……あずにゃん?」 「し、し、失礼します!」 羞恥心に耐えかね上擦った声をあげ、寄りにも依って私が選んだ行動は——逃げ帰ることだった。 ◆ ◇ ◇ さっきは蔑ろにしていたとは言え、内容が過激なこともあってか、どうしても頭から離れていかない。自分がそんな人間だったのかと思うとちょっぴり凹んでしまい、机に突っ伏す。 「どうしたの、梓。元気ないね」 「なんだ、純か……」 「……なんだとは何よ」 「ごめんごめん。今朝からちょっとアレで……」 「アレ?ってなに?」 「……ちょっと耳貸して」 口外するには恥ずかしい内容なので、ひそひそ話。恥ずかしいとは言え、こうして誰かに打ち明けることで、少しでも気が紛れることを期待している。 「……っていう感じで」 「はは〜ん……」 「まあ、それだけのことなんだけどさ。なんか、朝から変な感じなの」 「うん。それで、梓はどう思ってるの?」 話半分で喋り始めてみたものの、純の追究の眼差しは何時になく真剣味を映している。……純もこんなに真面目な顔をする時もあるんだ。 でも、私としてはこれ以上話を広げる積もりは無かった。印象が強いとは言え、ほとんど空想に近いものなのだから、取り立てて議論する必要性を感じていない。 「何が?」 「何がってことはないでしょーが。こういうのって、本人の願望とか欲求とか、深層心理が色濃く表されるっていうのは定番でしょ?」 「そ……そうなのかな」 「そーよ」 純は真顔で突っかかってくる。この反応は想定外だった。でも、このことについて元々考えたことはないのだから、どう思うも何もないとしか言えないので、この場はひたすらお茶を濁すしかない。 そうこうしているうちに、もう一人の友人が教室に見える。 「憂、おはよ」 「おはよう、純ちゃん。梓ちゃん。何の話?」 「それがねー」 私からの話のタネを、憂の耳元で囁く純。わざわざ私がひそひそ話でしたことを忘れずにいてくれたようで、律儀に守ってくれている。割とデリカシーを弁えてるから、やっぱり良い子なんだろう。 その話を受けて、憂の感想ときたら。 「あ……梓ちゃん……私だってまだなのに……」 「……なんか、ごめん」 憂もなかなか底知れない感性の持ち主だと思う。まさか羨ましがられるなんて、誰が予想できたことか。 その日は時間の経過が早く感じて、あっと言う間に放課後になった。帰りのホームルームも終わり、二人と別れて部室へと辿り着く。 実はあれから、純の念押しがどうしても吹っ切れなくて、授業中だというのに唯先輩について考え出してしまったのだ。頑なに拒んでいたつもりがこうもあっさり崩れ去るとは、実に浅はかだと思う。 そんなこんなで想像を巡らせていたばっかりに、今日に限って部室に入るのが気まずくて仕方がない。昨日の今日で見てきたものだし、記憶を掘り起こせば鮮明に思い出せるのから厄介なのだ。私の記憶にあることが、当人に自覚させられる訳もない。その人は何食わぬ顔で触れてくるだろう。 これはもう、避けては通れないのだ。覚悟を決めるしかない。 「——こんにちは」 「あ!あずにゃん!やっほー!」 いの一番に私の元に駆けつけては、両手をひろげて抱きついてくる先輩。 「にゃっ!」 「今日もあずにゃん分の補給ー!」 「来たばっかりなのに止めてくださいよ、もう」 そう、この人はこうするのが好きな人なんだ。これ自体に特に深い意味はないに、違いない。 きっとそうなんだろうけど……今の私には、如何せん刺激が強すぎる。 「……唯先輩」 しばらく、遠ざけないと、冷静に判断ができなくなりそうだから。 「ん?なーに?」 聞き返す先輩に向かって、一言、呟いた。 ◇ ◇ ◇ 私は今、大きなダブルベットの上で寝ている。 蒲団の感触が膚へ直に触れてくるものだから、恐らく何も着ていないのだろう。 「——ねぇ、あずにゃん」 声がする方を振り向くと、そこには居たのは、唯先輩。合宿以来久し振りに見る素膚が眩しかった。やっぱり、私と同じで裸みたいだ。 「ずっと前から言いたかったことがあるの」 「なんですか?」 この状況——まあ、そういうことなんだろう。 「あずにゃん——愛してるよ」 先輩が優しく手を取ってくれる。 されるがままの私も、さぞかし恍惚とした表情をしていただろう。 「……好きだよ」 「先輩……私も」 唇が、少しずつ距離を縮めーー 既でのところで、目が覚める。 「……何なの、今の夢」 我ながらどうしようもない夢を見てしまったものだ。 「唯先輩が私を愛してる……?そんなまさか」 確かに好きとは言ってくれている。でも、先輩はわりと大袈裟な表現もするタチだし、好きを越えて愛してるなんて、ギー太にだってしょっちゅう言ってる。決して特別な言葉ではないだろう。 私に向けて言うそれが、異性との間に芽生える物とは一線を画しているのも分かっている。 「……愛してる、か」 なのに何だか、落ち着かない。作り出されたあの状況が、私をその気にさせているのだろうか?それよりも私は、先輩のことを色眼鏡で見ていたというのだろうか。それはそれで、問題な気もする。 たかだか夢なのに真面目に考察するのも莫迦莫迦しい。私は登校の仕度を始めることにした。 ——この頃の私には、まだ実感が無くて。 これから起きることなんて、まだ知る由も無かった。 【おしまい!】 いまいち時系列が伝わりにくいな -- (名無しさん) 2010-12-11 03 51 24 素晴らしい作品。 -- (名無しさん) 2021-01-06 23 15 42 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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ある日の放課後、学校近くの公園のベンチにて―― 「んー♪冬はやっぱり肉まんだねっ♪あずにゃんも食べる?」 「あ、じゃあ…一口だけ」 「はい♪」 「いただきま…あちゅっ!!」 「あぁっ、大丈夫?」 「だ、だいじょうぶです…ちょっと思ってたより熱かっただけです」 「あずにゃんは猫舌なんだねぇ?さすが!」 「…あまり嬉しくないです…」 「でもなかなか食べられないね…あ、そうだ!口移しで食べればいいんだ!」 「くっ、口移し!?」 「一回私が口の中で冷ましてからあずにゃんに食べさせてあげれば熱くないでしょ?私ってばナイスアイデア~!」 「い、いやいや絶対無理が…」 「はい、じゃあ食べさせてあげるから口開けててね?あーんって」 「ちょ、ちょっと…」 唯先輩は肉まんを一口だけ口に含むと私の肩に手を置き、ゆっくりと顔を近づけてきました。 ここまで来たら今さら何も言えない…私は思いきって口を開けます。 「んっ…!」 唯先輩の唇が私の唇に重なり、その奥から柔らかい肉まんの欠片が私の口へと押し込まれました。 唯先輩の熱を帯びた舌が私のと絡み合うと、私の頭に痺れるような感覚が走ります。 …唯先輩の舌、おいしい…… 「…どう、おいしい?」 「はい…すごく」 「そっかー♪ならもう一口食べる?」 「あ、あの…肉まんはもういいんで、その…」 「なあに?」 「唯先輩の…唇が食べたいです」 「え?でも私、口の周り油だらけだよ?」 「それでもいいです。いえ、むしろそっちの方がいいです!ぬるぬるの唯先輩を綺麗にするなんてやりがいがあるじゃないですか!」 「あ、あずにゃん…?目が怖いよ…」 「では…いただきまちゅっ!」 「んんー!」 まずは肉まんの油で汚れた唇のお掃除から。綺麗になるように舌でペロペロと舐めてあげます。 ポイントはただ舐めるだけ。ひたすらに舐めて、唯先輩を綺麗にすると同時に気持ちよくしてあげるのです。 「ペロペロ…」 「ん…ぅう……んー…」 唯先輩もその気になってきたのか、私の腰に手を回して抱き寄せます。この行動は唯先輩にスイッチが入った証拠なのです。 ですが…ふふふ、まだまだエンジンはあったまってませんよ唯先輩。 「…どうですか唯先輩、口の周り、だいぶ綺麗になりましたよ」 「ん…うん……」 「でもまだ口の中は油だらけですよね」 「え…?」 「うふふ…」 「ま、待ってあずにゃん、唇だけでいいんじゃ……っ!」 唯先輩の口に舌を差し込むと、油でねっとりとした唾液が私の口に流れこみます。 さっき舐めてあげてた時、飲み込めなかったんですね…大丈夫です。ちゃんと綺麗にしてあげますから。 私は唯先輩の口の中で舌を動かして、油を舐めとっていきます。 ぬるりとした感触(いや、食感?)は今まで感じたことのない刺激的なもので、私の理性は当の昔に吹き飛んでいました。 「ふぅっ、ふぅっ…ふっ…んっ…ちゅ…」 「っ…!」 息が荒くなったかと思った唯先輩は私に舌を絡ませました。どうやら、エンジンは完全に温まったようです。 私は唯先輩の膝の上にお尻を乗せて、思い切り抱きしめます。 向き合って抱き合っているのは人に見られるのは少し恥ずかしいけど…人通りも少ないし大丈夫だよね。 「はっ…はぁ…はぁ…あずにゃん…」 唇を離すと、お互いの口から唾液がこぼれて制服を汚します。でも、そんなのどうでもいいですよね。 私は手のひらを唯先輩の胸に当てて優しく持ち上げます。最近成長著しい弾力のある胸が、私の手の中でその形を変えます。 「んっ…♪」 「唯先輩…私、唯先輩の肉まんが食べたいです」 「ダ、ダメだよあずにゃんこんなとこじゃ…ゃんっ♪」 「…いいじゃないですか。誰も見てないですし」 「んもう…あずにゃんって、場所お構い無しなんだね」 「私は私の道を行く、ですよ。じゃあ…服、脱がせてあげますね」 「…寒いから、すぐあっためてね」 「お安い御用ですよ♪」 そうして欲望の赴くままに唯先輩のタイをほどき、ワイシャツのボタンに手を掛けたところで―― ビチャッ 「ん?何今の音」 「唯先輩まさか、こんな音がするほど興奮して…?」 「そ、そんなわけないじゃん!いちいちスカート確認しないでよぅ!…あ、ムギちゃん」 私たちのベンチの後ろにムギ先輩が大量の鼻血を出して倒れていました。どうやら気絶しているようです。その横には…憂。 「い、いつから…?」 「冬はやっぱり肉まんだよね…」 「要するに全部見てた…?」 「……」コクリ 数秒の沈黙。憂から感じられる覇気…私の決断は一つでした。 「…唯先輩、帰りましょう。私の家へ」 「え?でも」 「ごめん憂!唯先輩は責任持ってお預かりします!」 「あ、あずにゃん…」 …ごめんなさい憂、時に愛は友情を上回るの…! 「もう、梓ちゃんたら何勘違いしてるのかな…仲間に入れてもらおうと思ったのに」 「3P!?」ビチャッ 「はぁ、ここまでくればなんとか…」 「う…うん…」 ふと見ると、唯先輩はお尻の辺りを抑えながらもじもじしていました。 その頬は真っ赤に染まっています。…そそられます。 「どうしたんですか唯先輩、もじもじしちゃって」 「う、うん…その、ね。パ、パンツが…その…ひ、ひんやりするっていうか…」 「…はっ!まさか…!?」 「…だ、だって…直前だったんだもん。しょうがないじゃん…」 「…やっぱり唯先輩、興奮してたんじゃないですか」 「……」 「ふふ、大丈夫ですよ。代えの下着くらい貸してあげますから」 「そ、そんなの履けないよ!」 「じゃあノーパンでいますか?」 「う…」 「私の少しサイズの小さいパンツを履いて色んなところが締め付けられる唯先輩…ジュルリ」 「…あずにゃん、最近変態さんだよね」 「悪いですか!私はじゃじゃ馬なんです!」 「わ、悪くないよ…ねぇあずにゃん」 「はい?」 「私…少し冷めちゃったかもしんない」 「そ、そんな!」 「だから…また最初からやり直してほしいな」 「え…?」 唯先輩が手元から取り出したのはさっきの肉まん…なるほど、私を試してるってわけですね… 「ふ、やってやるです!」 END 憂選手ww そしてムギちゃん大丈夫かw -- (鯖猫) 2012-10-14 15 56 10 ↑大丈夫じゃなさそう -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 13 03 48 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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ジャジャ ジャジャ ジャーン♪ 梓「唯先輩」 唯「ほえ?なぁに、あずにゃん」 梓「いつも言ってますけど、2番に入るところ、インテンポでお願いします。休符が長すぎます」 唯「え~?ちょっと遅くなるぐらいいいじゃん!」 梓「駄目です!確かに前の小節でリットかけますから、テンポ感が無くなりがちなのはわかりますけど、ここは唯先輩がしっかりとみんなを引っ張ってください」 唯「うう~…、でも、難しいよお~…。そ、その辺は今までどおり雰囲気で行こう!」 梓「…はあ」 唯「ダ、ダメかな…?」 梓「そうですね、じゃあ、逆に聞きます。この辺り、唯先輩はどんな演奏のイメージを持っていますか?」 唯「イメージ?う、う~ん。ジャジャ、ジャジャ、ジャーン!!決まった!さあ、2番行くぜ!!って感じかな?」 梓「なるほど、それはどうしてそう思ったんですか?」 唯「え?ノリ?」 梓「…はあ」 唯「な、何かおかしなこと言った!?」オロオロ 梓「…」 唯「あ、あずにゃ~ん!ご、ごめんね?」 梓(考えてみたら、唯先輩にこういうことをしっかり教えてあげる人っていなかったんだよね) 唯「あずにゃん?」 梓(それなのに、ここまでやって来てるんだ) 梓「…唯先輩」 唯「は、はい!」 梓「音楽室に行きましょう」 唯「了解しました!って、音楽室?なんで?」 梓「ピアノがあるからですよ」 梓「唯先輩、フタ開けるの手伝ってもらえますか?」 唯「まかせなさい!よいしょっと!!」 梓「これで、よしっと。唯先輩、隣に座ってください」 唯「うん!」 梓「もう少しこっちに座っても大丈夫ですよ」 唯「そう?じゃあ、お邪魔するね~!あずにゃん、ピアノ弾けたんだね~!」 梓「音をとるのに使うだけなので、曲とかは弾けないですよ。いつもならムギ先輩のキーボードを借りるんですけど、今日はまだいらしてませんから」 唯「へえ~。何だか、ミュージシャン!って感じ!」 梓「そ、そうですか?コホン。さて、唯先輩。この曲のコード進行はもう頭に入ってますか?」 唯「え、え~と、キーはEメジャーで、イントロはEからA、Bって感じで進行していくんだよね!」 梓「そのとおりです。冒頭の唯先輩のソロで始まるイントロはE→A→Bのダイアトニック進行です」 唯「だ、だいあとにっく…?と、とりあえず、基本的なコード進行なんだよね!(って澪ちゃんが言ってた気が…)」 梓「トニックからサブドミナントへ、そしてドミナントに行ってトニックに戻る。基本的なコード進行ですね。唯先輩、そもそも、この曲のキーについてはどう思ってます?」 唯「Eメジャーについて?う~ん…、そんなこと考えたことなかったなあ」 梓「Eメジャーってことはホ長調のことですよね。ホ長調の主和音がどの音で構成されているかわかります?」 唯「(多分私のソロ音だよね…)ミとシとソかな…?」 梓「…自分のソロの音を低いほうから言いましたね?」 唯「ぎくっ!!」 梓「でもまあ、大体合ってます。性格には、ミとソ♯とシですね。こんな和音です」 ♪ 唯「おおぅ…」 梓「ホ長調はきらびやかで軽やかな音色を持ちます。どうですか?」 唯「何か、楽しくて、わくわくして」 梓「そして、このキーからサブドミナント、ドミナントへ移っていきます」 ♪♪♪ 唯「おおっ!なんだか勢いがついて来たよ!どこかに行っちゃいたい気持ち!」 梓「しかも、この曲の実際の音符は、唯先輩が先ほど言ったように、低いほうからミ、シ、ソ♯と和音の構成が入れ替えてあります。こんな音です」 ♪ 唯「!何だか、さっきより…」 梓「気持ちが『ふわふわ』しませんか?」 唯「!!あずにゃん!」 梓「澪先輩が作った歌詞をムギ先輩が受け取って、曲にしてくれました。ムギ先輩はどうしてこの曲をEメジャーで書いたのでしょうか。なんとなく感じてもらえましたか?」 唯「うん…。この曲を演奏したときのこの気持ちは、澪ちゃんの歌詞から来てるだけじゃないんだね」 梓「そうです。コード進行を意識することはもちろん大切なことです。でも、今自分たちが出している音がどういったものなのか。それを考えることも大切です」 唯「うん…」 梓「そこで、先ほど2人で演奏していた2番の入りのところを見てみます。コード進行自体はトニックであるEからサブドミナントのAへ、そしてドミナントのBに行き、トニックのEに復帰する、というようになっています。しかし、最後のトニックの和音、実は完全に完結しているわけではないんですよね。イントロのふわふわした和音のままなんです」 唯「ということは、コード進行では終わったと見せかけて、本当は終わってないってこと?」 梓「そうなんです。ここは偽終止なんです。聴き手にもう終わるかのように思わせておいて、まだ終わらないと面食らわせるのが目的のところなんですよ。もし、ここで2番に入らずにそのまま終わらせたらどうなります?」 唯「なんか、微妙な雰囲気になりそう…。あっ!」 梓「ふふっ、私の言いたいこと、わかってくれました?」 唯「だから、あずにゃんはその後の入りにこだわっていたんだね!!」 梓「わかってくれましたか!まあ、あくまで私の解釈なので正しくないかもしれませんが」 唯「ううん、教えてくれてありがとう。私、この曲のことが好きだったけど、あずにゃんのおかげでもっと好きになって来たよ!もっともっと好きになりたい!」 律「梓はまだ練習したいみたいだな~?ん~?」 梓「い、いえ、そんなことないです。そろそろ休憩してもいいんじゃないでしょうか!」 律「あれ?今日はやけに甘いじゃないか。ハッ!さては、こっそり家で練習してリードギターの座を狙っているな!?」 唯「えええええ!?あ、あずにゃん、そうなの?」 澪「まあ、梓の腕前を考えるとすぐにでも任せられるしな…」 律「来年は中野先輩は部長様だし、そろそろ表舞台に立ってみるか~?」 唯「はうっ!あ、あずにゃ~ん…」 紬「あずさちゃん…」 梓「もう!みなさんからかわないでください!私はそんなつもりありませんから!」 唯「あずにゃあ~ん!!」ダキッ! 梓「ひゃあ!?」 律「全く、でもお茶ばっかりしてたらリードギターの座を今に梓に取られちゃうぞ~!」 澪「やれやれ」 紬「みんな~!お茶入ったわよ~!」 唯「あずにゃん、これからもよろしくね~!」 梓「そろそろ離れてください…!でも、練習サボってたら今度から私がリードギターやりますからね!」 唯「う、が、がんばります…」 梓「全く…」 梓(でも) 梓(卒業するまではリードギターをやらせてあげます。だって) 唯「あう~…、やっぱりもうちょっと練習しようかな~…」 梓(どんどん成長していく唯先輩の音を隣で聴いていたいから) 終わり あずにゃんは実力で唯先輩を抜けるけど抜けない -- (あずにゃんラブ) 2013-12-29 02 36 59 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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421 名前:SS「ふぁっく!」[sage] 投稿日:2009/08/20(木) 02 24 32 ID nvBLiSdf 律「気に入った!ウチの弟をファックしてもいいぞ!」 唯「えー聡くん?……りっちゃんじゃだめかな?」 律「あたしファックしても面白くないだろ」 唯「えー。でも私りっちゃんをファックしたいよー!」 律「でも……なぁ?」 紬「りっちゃん、一回くらいファックされてあげてもいいんじゃない?」 梓「犬に噛まれたと思って。ほら、唯先輩犬っぽいじゃないですか」 律「言われて見れば犬っぽいな。うーん……ま、一回くらいならいいか」 澪「!?」 紬「きゃー!」 唯「ホント!?ありがとうりっちゃん!私一生懸命ファックするからね!」 律「張り切ってんなぁ」 紬「ちょっと(撮影的な意味で)用事ができたので帰ることにするね」 梓「私も(耳フェチ的な意味で)やることを思い出しました。帰宅するです!」 律「おー。おつかれー」 唯「あずにゃんムギちゃん準備よろしくー!さて、私も帰ってごはん食べて精をつけるるね!じゃあまた明日!」 律「ほんじゃなー」 澪「……あの、律?ほ、ほ、ホントに唯と……その……するの?」 律「あー唯がしたいしたい言ってるし一回くらい良いんじゃないかな」 澪「でも、そういうことは……もっと……その、大切な人とするべきじゃ……」 律「あたしは唯のこと大切に思ってるよ?けいおん部の仲間じゃん」 澪「そ、そう、か……。グスン。律が……そう言うなら……仕方ない……な……」 律「あれ澪泣いてるのか?大丈夫か?」 澪「ううん大丈夫。ゴミが目に入っただけ……」ポタ……ポタ…… 律「そか。目薬いるか?」 澪「いらない……」 律「そっか。……ところで澪、ファックって何?」 澪「えっ」 律「勢いで承諾しちゃったけど何のことかわからないんだよなー」 澪「でも、最初にファックって使ったのは律で」 律「随分前に見た映画か何かで誰かが言ってた台詞だよ」 澪「えぇ~……」 律「何なんだろうなー?」 もちろん澪ちゃんは恥ずかしくて何か教えられません。 翌日りっちゃんは犬耳つけた唯とライオン耳をつけようとしてくる梓と映画監督のような格好した紬に追い掛け回されるのですが……それはまた、別のお話。 流石にこれをバースデーSSに回すのは気が引けた 出展 【けいおん!】田井中律は小学生か可愛い71【ドラム】 このSSの感想をどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る
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『唯「ふっふ~♪」』の続き 唯「パーティー盛り上がったね」 梓「あんなに盛り上げて貰えるなんて思いませんでした」 唯「だってあずにゃんの誕生日だよ」 唯「盛り上げないと駄目だよ」 梓「ふふっ、ありがとうございます」 唯「うふふ」 唯「えへへ~」 梓「唯先輩、嬉しそうですね」 唯「だってあずにゃんの誕生日を盛り上げたいってずっと思ってたんだもん」 唯「あずにゃんが喜んでくれて良かったよ」 唯「あずにゃんが喜んでくれたと思ったら嬉しくて」 唯「えへへ~」 梓「唯先輩…//」 唯「それに…」 梓「それに?」 唯「なかなかケーキのロウソクが消せないあずにゃんの姿が可愛いくて//」 梓「なっ//」 梓「そ、それは言わないでくださいよ!」 唯「えー、なんで?」 唯「可愛いかったよ」 唯「フー、フーってやってる姿」 梓「もう…//」 梓「そう言えば唯先輩?」 唯「ん?何?」 梓「貰ったプレゼントなんですが」 唯「プレゼント気にいってくれた?」 梓「はい、素敵なマフラーをありがとうございます」 唯「良かった~」 梓「でもこのマフラー…少し大きくありませんか?」 唯「おぉー、あずにゃん気付いたね」 梓「えっ」 唯「マフラー、今あるよね?」 梓「あっ、はい」 唯「ちょっと貸して」 梓「どうぞ」 唯「あずにゃん、おいで」 梓「…はい」 唯「こうやって巻くと…」 唯「ほら、ぴったり」 梓「二人で使うとぴったりのマフラー」 梓「普段、使えないじゃないですか!」 唯「あれ?駄目だった…」 梓「……」 梓「普段、使えないんですから」 梓「つ、使う機会を作ってくださいよ…//」 唯「うん!」 唯「一緒にマフラーして出掛けようね」 梓「…はい」 唯「もうすぐあずにゃんの誕生日終わりだね……」 梓「……」 唯「……」 梓「唯先輩、知ってましたか?」 唯「何を?」 梓「唯先輩の誕生日までの16日間」 梓「私、唯先輩と同じ年になるんですよ」 唯「えっと……」 唯「おぉー、本当だ」 梓「同じ年になったので1回だけ言わせてください」 梓「今日は色々とありがとうございました…唯//」 唯「!?」 梓「………//」 唯「えへへ~唯だって」 唯「もっと呼んでも良いんだよ」 梓「1回だけって言ったじゃないですか…//」 唯「じゃあ、来年になったらまた呼んでもらおう」 梓「来年になったらですよ」 唯「約束だよ」 梓「はい(その前に今度は私が唯先輩の誕生日を祝ってあげないと!!)」 終わり 呼び捨てがこんなに良いなんて思ったのは唯梓からだわ -- (あずにゃんラブ) 2014-01-03 01 47 02 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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559 名前:ss[sage] 投稿日:2009/08/05(水) 18 50 12 ID iKPWIvRF 律「あー、勉強だりぃー…今頃みんな何やってんだろうなぁ…」 律「唯はー、憂ちゃんと一緒にいるか、ギター弾いてるんだろうなぁ…」 律「ムギは…ダメだ想像できん。 令嬢としてパーティーか?流石に平日にはないか」 律「梓は…アイツもギターかな。いや、予習復習マジメにやってそーだ…」 律「澪ぉーはぁー… 宿題とっくに終わらせて、作詞でもしてるんじゃないかなぁ んで、完成して、こーやって今私がぼーっと眺めてるケータイにメールを ぴろぴろぴろっ♪ 律「うおわっ! な…み、澪っ!?」 特に意味はない 出展 【けいおん!】田井中律は向日葵可愛い59【ドラム】 このSSの感想をどうぞ 名前 コメント すべてのコメントを見る ♪どんなとき~も~、ふたりじゃなきゃだめなの~。 -- (紅玉国光) 2009-10-06 18 27 03